10月28日(日)
決して飲み会から始まったわけではない。
台風一過のホリデーに、
開催しました恩田ツアーのワークショップ。
集結したのは次回恩田ツアー出演陣はじめ、
日本全国津々浦々から集結した芝居畑の猛者たち。
劇団主宰・元劇団主宰からはじまって
ボクサーや人妻
フランチェスコという洗礼名を持つ謎の男。
双子で芝居やっていますというダンサー兼役者。
「のこぎり山」という関取のような芸名を名乗るOL。
エトセトラエトセトラ。
パッと見は誰もが和やかで温かい雰囲気にも関わらず
自己紹介のコメントを聞いているうちに、
「なんだか変な人ばっかり集まったなぁ」
と我ながら不思議な取り合わせに関心してしまう。
自分がワークショップに参加することも主催することも
そんなに多くはないので、この印象がありふれたものかどうかは
よくわからないけれど、今回のメンバーそれぞれが興味深いことは確かだ。
また、参加者の経歴やコメントとして語られる情報の中身もさることながら、
表情・体の動きといった見た目をまじまじ観察してしまう。
これがかなり面白く、いろいろ盗み見ては笑いをこらえるのに、
かなりエネルギーを使ってしまった。
笑いをこらえながら、それが時々抑えられない自分は
ちょっと変態っぽく見えたかもしれない。
なんとなく人間ぽくない人。
ほんのちょっと地面から浮いてそうな人。
戦国時代の武将に「殿、お逃げください。」と言いそうな人。
伝統芸能の家元っぽい人。
どんなに間違いを犯しても、「おっとりしてる」の一言で許されそうな人。
肝心なときにプレッシャーに押し潰されて、とんでもないことを
やり出しそうな人。
そのうえ意味の分からない言い訳をしそうな人。
巻き込まれたみんなはもう大パニック!
ワークショップの進行をしながらも、すでに恩田の頭の中では
上記のような設定で寸劇が始まっている。
これだけこちらの想像をかき立てるというのは、
もうこのメンバーが魅力的だからということに尽きるのだが、
なんのなんの脳内劇場はまだ序の口。
以下のような設定で即興芝居を演じてもらい、
さらに腹を抱えて笑う。
お見せできないのが残念だ!
1『マチコは大丈夫か』
不治の病の妹マチコ(小森智也)を献身的に看病する姉(山森信太郎)。貧しい姉妹を男の役者二名で熱演。往診の町医者(小櫃川桃郎太)はけなげに生きる姉に惚れているため、残酷な真実を告げることができず苦悶する。そんな医者に思いを寄せる看護婦(森田金魚)は、煮え切らない医者の片思いを断ち切ろうと妹に突然まさかのガン告知。
薄幸な姉妹の運命やいかに?!姉を演じるヒゲの大男・山森さんと、その手を握り締め恋する男を演じている小櫃川さんのツーショットが可笑しい。
2『右も左も分からない』
高名な心臓外科医(ジャッカル)は、手術になると右と左が分からなくなってしまうというちょっとあぶないお医者さん。彼にオペを止めさせようと奮闘するナース(小口麻美)と助手(辛嶋宏章)。デンジャラス・ドクターの悪意なき暴走を止められるのか?!天然のジャッカルさんにエッジの効いた合いの手が絶妙な辛嶋くん。テンパリ娘を演らせたらこのひとの小口ちゃんが「ほのぼの大変」なシチュエーションを好演。
3『人間じゃないかもしれない』
自分はなんとなく人間じゃないかもしれないと悩む高校生カラシー(辛嶋宏章)が、幼なじみの二人(佐々木さりえ、小森智也)に相談をもちかける。「どうやら俺、人間じゃないっぽい。」話が進むうちに、カラシ−は「自分はワカメだと思うんだ」と言い出し始める。
見た目と内面とのギャップに悩むカラシーに二人はどんなアドバイスが出来るのか・・・?!冷静でいようと努める佐々木に対して、どんな球にもまったく動じない様子の小森さん。ご本人の懐の大きさが垣間見える一幕。
4.『心配性』
自分が心配性じゃないかと心配してやまない男(渡辺正和)を、なぐさめる飲み友達(竹田みずき)と傍観する男(小櫃川桃郎太)。心配性だったらどうしたらいいんだと心配しているその時点で心配症?という終りなき無限ループから彼は抜け出せるのか?!という話。
一昔前の月9みたいな雰囲気が出ていたのは、渡辺君の若い芝居と竹田くんのけだるいテンションのなせる業とみた。
5.『金儲けがしたい』
童話作家アンデルセン(山森・小櫃川)と三人のマッチ売りの少女(佐々木、森田、小口)が登場。マッチの売れないマッチ売りの少女(森田、小口)はもうマッチは売りたくないとアンデルセンに転職願いをする。ところが、売れないマッチを売るから読者は感動できるんだと取り合ってもらえない。しまいにはナンバー1マッチ売り少女(佐々木)が、自分の下積み時代は寒空の下、全裸でマッチを売ったこともあったと言い出し始める・・・。
途中から、小櫃川さんと山森さんがコテコテの関西弁になることで、世界観がギュイーンと変わって、舞台は大阪・道頓堀の有限会社アンデルセンに。小櫃川さんの場の色を塗り替える力は素晴らしい。小口ちゃんの瀕死の演技と森田さんの学級院長的な真面目な発言とが、腹黒い童話作家との力関係を際立たせており、エチュードにも関わらず非常に見やすい構図を作っていた。
6.『高橋先生の脳内会議』
高橋先生の頭の中という設定。
三人の役者が三人とも高橋先生(竹田みずき、小森智也、ジャッカル)という役で会議をするという話。
議題は「クラスメートの持ち物を盗んだ生徒を職員会議にかけるか、否か。」この生徒は既に大学への進学も決まっており、ここで高橋がどう出るかで生徒の人生を左右してしまうという重たい局面。公の場で罰するのが難しいなら闇討ちして頭を丸刈りにしてはどうか、などと過激な意見が飛び交う。見た目がおとなしい竹田の口から「昔はよくガラス窓をぶち破って」いたなどという発言が出て、場内にどよめきが。ジャッカルさんの力技でない引率力で、気がつけば不思議な世界に引っ張りこまれてしまう。
エチュードというのは、お題についての理解度や発想の着眼点などが如実にその役者の芝居に表れてくるので面白い。
設定や台本のように「縛り」があったほうが演じやすいという役者もいれば、まったくのゼロ地点から自由に作り出すのが得意な者もいる。ほとんど素のキャラクターでその場にいられるトクな人も、お題ごとにきっちりキャラクターを演じ分け、芝居を見せてくる仕事人も。
今回はいろんなタイプの役者さんが揃っていて、バラエティに富んでるなぁという印象。
恩田ツアーの今回のワークショップで即興劇を演じてもらった目的は、
キャスティングのために役者同士の相性を見たいというのがひとつ。
そして、予備知識がない人が見たときにその役者はどういう第一印象を与える役者なのかを知りたかったというのがもうひとつだ。
というのも、ある役者の性格なりお決まりの役を変に知っていると、それに近いキャラクターを無意識に意図せずあて書きしてしまったりする気がして、それはちょっともったいないというか、慎重でいないといかんなぁと思うのだ。
だから、その役者が初対面の人に与える印象を改めて知ることで、その裏をかいたキャラ設定を意識できるし、こちらが思いもしなかった一面を見せてくれると、役としてもっと膨らませたくなる。
この作業自体が楽しいし、キャスティングの醍醐味だと私は思っている。
まあ、最終的に出来る台本はそこまで考えて書いてないような気も
するけれど・・・。そこはまあまあそんなものです。
ワークショップの最後には、『電車という病』という
私が書いて森田さんに演出していただいた二人芝居の台本を使い、
「芝居のセリフを音にする」という作業に取り組む。
これは円になった全員で台本のセリフをひとまとまりごとに読み上げていくのだが、
この時音楽のリズムに乗って、意味よりもテンポ重視でどんどんセリフを回していく。
使った音楽は「渋さ知らズ」の『火男(ひょっとこ)』だ。
台本は歌詞カードのような感覚で持ってもらい、曲のリズムに合わせて体は弾んだり踊ったり全身で音に乗ってもらう。
セリフを読む人間を円陣の人々が囃し立てる雰囲気を
「ブラジル柔術・カポエイラのような感覚で」と説明すると、
なんとその場でカポエイラ経験者2名(小櫃川さんとジャッカルさん)が名乗りをあげて、
その様子を実演してくれる。素敵すぎる。
音楽の途中で円陣からはずれたり、言葉に極端な節をつけたり
恩田がまず無茶苦茶にやってみる。
すると、それをきっかけに何人かが解放されたように
ウキウキと踊り始める。発する言葉も色とりどりに輝き始める。
人間が、ダンスする楽器みたいに見えてくる。
言葉が歌でもセリフでもない自由な音になっていく感じ。
この感覚を芝居にうまく取り入れていったら絶対面白い。
今回の「セリフを音にする」コーナーは初の試みではあったが、
稽古の段階ではもっともっとトランス状態みたいな空気を目指してもいいかもしれない。さらに突き抜けたテンションでこういった作業を試していくうちに、新しいスタイルが見えてきそうな気がする。
音と運動が生む「うねり」のようなものを予感しつつ、ワークショップ終了。あっという間だ。
ワークショップ後は、二次会まで宴が続いた。
稽古のためやむなく帰途についた小櫃川さんも、
いい余韻を残してくださり、座はいつまでも温かく。
何よりも忙しい合間を縫って参加してくださったことがありがたい。
「恩田さんはやっぱり頭狂ってますね〜」などと
多分褒め言葉であろう感想を人間じゃないかもしれない辛嶋くんから聞きながら、
したたかに酔っ払って最終列車に乗った。
P.S.
参加者の皆様、お疲れ様でした。また一緒に筋肉を鍛えましょう。